人を大切にする経営

好業績のイメージ

□私はこれまでおよそ40年間、全国各地の約6500社の中小企業を訪問し、その経営の現場をただひたすら見てきました。そしてそのうちのおよそ一割の企業は、好不況にかかわらず、その業績がほとんどぶれていないことに気がつきました。
それも、売上高対経常利益率で見ると、長期にわたって5%前後以上を持続しているのです。なかには50年以上連続増収増益で売上高経常利益率は10%以上という企業や、40年間、売上高経常利益率が20%以上といった驚くべき企業もありました。
それらの企業は、景気を超越し、景気を創造していたのです。つまり、景気は関係なかったのです。
そこで、こうした企業をハード面・ソフト面から詳細に調査研究してみると、いくつかの共通する特長があることがわかります。
その最たる共通項とは、「人間尊重経営」「人本経営」、つまり人を大切にする、人のしあわせを念じた経営が貫かれていることでした。

《日本でいちばん大切にしたい会社3 坂本光司著》

□企業が経営を進めていく上でとりわけ大切な人は、次の5人です。
1人目は、「社員とその家族」。
2人目は、「仕入先や協力工場等で働く社外社員とその家族」。
3人目は、「現在顧客と未来顧客」。
4人目は、「地域住民、とりわけ障がい者や高齢者などの社会的弱者」。
5人目は、「株主・出資者・支援者」。
まず経営者が大事にしなければならないのは、「社員とその家族」であり、「仕入先や協力工場等で働く社外社員とその家族」です。
そして、社員がとりわけ大切にしなければならないのは「現在顧客と未来顧客」です。

《日本でいちばん大切にしたい会社4 坂本光司著》

□人、とりわけ社員とその家族を大切にしている企業の業績は例外なく高く、逆に業績向上の手段・コストなどと位置づけている企業の業績は、例外なく低い、ということが、多くの企業研究の成果として近年、明らかになっています。
それもそのはず、組織満足度やモチベーションの高い社員が、企業の盛衰の決定権者である顧客に対し、満足度の高い言動をするのは当然だからです。
逆に言えば、所属している組織や上司に対し不平・不満・不信感を持った社員が、顧客に対し感動的な価値を創造・提案するとは到底思いないからです。

《日本でいちばん社員のやる気が上がる会社 坂本光司著》

大先輩に学ぶ (新版・敬天愛人 稲盛和夫著 PHP研究所 より)

□お二人(松下幸之助さん・本田宗一郎さん)は燃えるような「熱意」を胸に、誰にも負けない努力を払われた。また、事業を通じて、従業員をはじめ世の多くの人々に貢献したいという崇高な考え方を持っておられた。

□あふれるような希望と、限りない夢を未来に描ける人でなければならない。
さらに常識にとらわれない人であり、常識にとらわれないで努力をすれば可能性が開けるのだと信じている人でなければならないのである。
夢を現実に成就させるためには、強烈な意志と熱意が必要となる。「こうありたい」「こうすべきだ」という強い意志は、その人の奥底にある魂そのものからほとばしり出るものでなくてはならない。
どんな困難があっても、それを乗り越え、成就するまでやり遂げようという強い意志が、体の奥底から湧き出てくるような人でなければ、創造的なことをすることはできない。

□事業を成功させるには、まずは人並み以上の強い情熱が要求される。しかし、成功していく過程で、人間性、人生観、哲学が浄化されて立派なものになっていかなければ、その成功を持続していくことはできない。あまりに強烈な情熱はいつか周囲との摩擦を生む。また、あまりに極端な目標達成意識は違法行為にまで走らせ、やがては没落に至る原因ともなる。
何かを成そうとすれば、大きなエネルギーを必要とする。だからこそ、誰から見ても、どこから眺めても、立派だと言えるような高邁な志、目的意識がなければ、自分の持てる力のすべてを出し切ることも、周囲の人々から協力を得ることも、成功を続けることもできないのである。