特別加入制度のあらまし

労災保険は、事業主に使用され賃金を受けている者、すなわち労働者の業務上の事由による災害または通勤途上における災害に対する保護を主な目的とする制度でありますから、事業主、自営業者、家族従事者など労働者以外の災害は本来ならば保護の対象とはならないとされています。また、労災保険法の適用については、属地主義により日本国内の事業場に限られており、海外の事業場に派遣された者の災害は原則として労災保険の保護の対象とはならないとされています。
しかしながら、中小事業主、自営業者、家族従事者などのなかには、その業務や通勤の実態、災害発生状況等からみて労働者に準じて保護するにふさわしい者がいます。
また、海外の事業場に派遣された者についても、派遣先国における労災保険制度の適用範囲や給付内容が十分でないために、わが国の労災保険による保護が必要な者がいます。そこでこれらの者に対しても、労災保険本来の建前をそこなわない範囲で労災保険の加入を認めようとするのが特別加入の制度であります。

特別加入者の範囲

特別加入をすることができる範囲は、次のとおりです。

□中小事業主及びその者が行う事業に従事する者

□一人親方その他の自営業者とその者が行う事業に従事する者

  1. 一人親方その他の自営業者
    特別加入することができる一人親方その他の自営業者には、例えば、「土木、建設等の事業を行う者(これには、大工、左官、トビ、石工など、いわゆる一人親方)」があり、常態として労働者を使用しないで事業を行う者が該当します。
  2. 一人親方その他の自営業者が行う事業に従事する者
    ここにいう「事業に従事する者」とは、労働者以外の者で、その事業に常態として従事する家族従事者がこれに該当します。特定作業従事者海外派遣者

□特定作業従事者

□海外派遣者

特別加入の申請手続

特別加入する場合の手続は、次のとおりです。

□一人親方その他の自営業者の場合

  1. 一人親方等が特別加入するためには、まず、それらの者が構成員となる団体が必要です。この団体について、特別加入が認められますと、その団体は事業主とみなされ、保険料の納付などを行うこととなります。
    こうした関係から、この団体は、多くの要件のすべてを満たす場合に承認されることになっています。
    ★この団体の一つに、神奈川SR経営労務センターがあります。弊所はこの団体の社会保険労務士(社労士)会員となっていますので、特別加入の手続を行うことができます。実際に、一人親方と請負契約をされている建設業等の事業主さまから委託を受け、手続を行っています(政治団体・宗教団体・労働組合とも一切関係ありませんので、そこにパワーがさかれる心配もありません)。
  2. 特別加入の申請をしようとする団体は「特別加入申請書(一人親方等)」を、その団体の主たる事務所の所在地を所轄する労働基準監督署長を経由して、都道府県労働局長に提出しなければなりません。
    なお、この申請書別紙の「業務の内容」欄には特別加入予定者ごとに業務の内容について、具体的に記入する必要があります。
  3. この申請書には、定款、規約等その団体の目的、組織、運営などを明らかにする書類、並びに業務災害の防止に関する措置及び事項の内容を記載した書類を添付しなければなりません。
    この申請書に対して、所轄の都道府県労働局長から承認が得られれば、労災保険の適用を受けることになります。

加入時の健康診断

特別加入をする者(職場適応訓練従事者、事業主団体等委託訓練従事者及び海外派遣者を除く)について、次表の特別加入予定の業務の種類に応じて、それぞれの従事期間を超えて当該業務を行ったことがある場合には、特別加入時に健康診断を受ける必要があります。

特別加入予定の業務の種類 特別加入前に左記の業務に従事した期間
(通算期間)
粉じん作業を行う業務 3年
身体に振動を与える業務 1年
鉛業務 6カ月
有機溶剤業務 6カ月

 

健康診断の手続

□特別加入を希望する者で特別加入時に健康診断が必要な場合には、初めに「特別加入時健康診断申出書」を、労働保険事務を委託している労働保険事務組合の確認(事務委託等の証明)を受けてから、当該事務組合の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければなりません。
なお、申出書と同時に「特別加入申請書(以下「申請書」といいます。)」又は「特別加入に関する変更届(以下「変更届」といいます。)」を所轄の労働基準監督署長に提出することもできます。

□「申出書」の業務歴等から判断して健康診断が必要であると認められる者に対しては所轄の労働基準監督署長から「特別加入健康診断指示書」及び「特別加入時健康診断実施依頼書」が交付されます。

□健康診断を受けた者は、健康診断証明書を、申請書又は変更届を所轄の労働基準監督署長に提出する際に添付することとなります。
ただし、すでに申請書又は変更届を所轄の労働基準監督署長に提出している場合には、健康診断証明書のみを提出することとなります。
また、じん肺の健康診断を受けた場合には、じん肺の所見がないと認められた場合を除き、エックス線写真の添付が必要となります。

特別加入の制限

健康診断の結果、次の場合には特別加入が制限されます。

□特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、その症状又は障害の程度が一般的に就労することが困難であって、療養に専念しなければならない程度であると認められる場合・・・従事する業務の内容にかかわらず特別加入は認められません。

□特別加入予定者がすでに疾病にかかっており、その症状又は障害の程度が当該業務から転換を必要とする程度であると認められる場合・・・当該業務にかかる特別加入は認められません。

給付基礎日額

特別加入者の場合は、労働者と異なり、賃金というものがありませんので、これに代わるものとして、告示によって給付基礎日額の範囲が定められていますので、その範囲内で特別加入者の希望を徴して都道府県労働局長が決定することになっています。

特別加入者の保険料

保険料率

一人親方等及び特定作業従事者については、一人親方その他の自営業者及び特定作業従事者の団体ごとに「第2種特別加入保険料率表」に定める第2種特別加入保険料率が適用されます。

賃金総額

特別加入者の賃金総額の具体的な算定方法は、次のとおりです。

□一人親方等及び特定作業従事者の場合
これらの団体は、いずれも継続事業として扱われますから、その年度における特別加入者各人の給付基礎日額に応じて定められている「保険料算定基礎額」を合計したものが第2種特別加入保険料率のための賃金総額となります。

保険料の納付

一人親方及び特定作業従事者の保険料については、特別加入の承認を受けたこれらの者の団体がその事業主となり、特別加入者はその団体に使用される労働者とみなされますから、保険料の納付義務はその団体が負うことになります。

補償の対象となる範囲

特別加入している方については、業務災害又は通勤災害を被った場合に労災保険から給付が行われます。

業務災害について

保険給付の対象となる災害は、加入対象に応じて一定の業務を行っていた場合に限られています。したがって、次に該当しない場合には被災しても保険給付を受けることができませんので注意してください。

□建設業の一人親方等

  1. 請負契約に直接必要な行為を行う場合
  2. 請負工事現場における作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
  3. 請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
  4. 請負工事に係る機械及び製品を運搬する作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合等

通勤災害について

通勤災害については、一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。ただし、次に掲げる一人親方等については、通勤災害の保護の対象となっていません。

□個人タクシー業者及び個人貨物運送業者

□漁船による自営漁業者