労働時間等に関する規定の適用除外(労働基準法第41条)
この章、第6章及び第6章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定1)は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者2)
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者3)
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
解説
1) この章、第6章及び第6章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定
本条各号のいずれかに該当する労働者が適用の除外を受けるのは、第4章、第6章及び第6章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定である。したがって、第32条(法定労働時間)、第40条(労働時間の特例)、第34条(休憩時間)及び第35条(休日)は、当然適用なく、また、時間外、休日労働に対する第33条及び第36条並びに第37条中時間外、休日労働の割増賃金に関する部分、年少者の労働時間、休日に関する第60条、妊産婦の労働時間に関する第66条等も適用を受けない。しかしながら、本法においては労働時間と深夜業とは区別して使用している関係から、本条にいう「労働時間」も深夜業を含まないと解されるので、本条各号のいずれかに該当する者についても、年少者及び妊産婦の深夜業禁止に関する第61条、第66条第3項及び割増賃金に関する第37条中深夜業に対する部分は適用除外にならず、また、年次有給休暇に関する第39条の規定も適用を除外されない。
2) 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
農業又は水産業等の事業に従事する労働者について規定しているが、これはこの種の事業がその性質上天候等の自然的条件に左右されるため、法定労働時間及び週休制になじまないものとして適用除外されたものである。なお、これらの事業と他の事業との区別については、別表第1を参照されたい。
3) 監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
これらの者は事業経営の管理的立場にある者又はこれと一体をなす者であり、労働時間、休憩及び休日に関する規定の規制を超えて活動しなければならない企業経営上の必要から認められるものである。第3号該当者と異なり許可が条件とされていないのは、これらの者の地位からして規制外においても労働条件に及ぼす影響が比較的少ないこと及びこれらの者の範囲は企業規模又は業種、業態によりおのずから一定の客観的な基準が考えられるからである。
(イ)「監督又は管理の地位にある者」(管理監督者)とは、「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。」(昭22・9・13 発基第17号、昭63・3・14 基発第150号・婦発第47号)。
具体的な判断に当たっては次の考え方によることとされている(前掲解釈例規)。
(1)原則
法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。
(2)適用除外の趣旨
これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従がって、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。
(3)実態に基づく判断
一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と、経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。
(4)待遇に対する留意
管理監督者であるかの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。
(5)スタッフ職の取扱
法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法第41条第2号該当者に含めて取扱うことが妥当であると考えられること。
また、金融機関以外における管理監督者に関する裁判例としては、従業員40人の工場の課長について、決定権限を有する工場長代理を補佐するが、自ら重要事項を決定することはなく、また、給与面でも、役職手当は支給されるが従来の時間外手当よりも少なく、また、タイムカードを打刻し、時間外勤務には工場長代理の許可を要する場合には、管理監督者に当たらない(大阪地裁判決 昭56年(ワ)第6733号 サンド事件 昭58・7・12)としたもの、ファミリーレストランの店長について、コック等の従業員6~7名を統制し、ウェイターの採用にも一部関与し、材料の仕入れ、売上金の管理等をまかせられ、店長手当月額2~3万円を受けていたとしても、営業時間である午前11時から午後10時までは完全に拘束されて出退勤の自由はなく、仕事の内容はコック、ウェイター、レジ係、掃除等の全般に及んでおり、ウェイターの労働条件も最終的には会社で決定しているので、管理監督者にあたらない(大阪地裁判決 昭60年(ワ)第2243号 レストラン・ビュッフェ事件 昭61・7・30)としたものがある。
(ロ)「機密の事務を取り扱う者」とは、国際労働条約の訳語を採り入れたものであって、必ずしも秘密書類を取り扱う者を意味するものではなく、秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者をいう(昭22・9・13 発基第17号)。