労働保険料(労災保険料・雇用保険料)は正しく申告しましょう

□税務署の税務調査と同様、労働保険料(労災保険料+雇用保険料)が正しく申告されているかの調査が入ることがあります。
これを労働基準監督署(労働局)による、「労働保険料算定基礎調査」といいます(ちなみに、社会保険の場合は、年金事務所による「健康保険・厚生年金保険に関する総合調査」が入ることがあります)。
この調査により、労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)が適正に申告されていないと判断されれば、過去2年間にさかのぼっての労働保険料の支払いを命じられる可能性があります。逆に、労働保険料の申告額が多すぎれば還付対象となります(過去2年間まで)。

□労災が発生すれば、労働基準監督署の調査が入る確率は高くなります。この時、労働保険料が適正に申告されていないと判断されれば、医療費・休業補償費などの多額の費用の負担を課せられる可能性もあります。

□労働者の方が安心して働ける職場環境作りにもなりますので、労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)は正しく申告しましょう。

労働保険料申告にまつわる陥りやすいミス・モレ、知っておくと便利なテクニックなど

一般の事業所

業種変更の申告モレ 業種を変えることで、労働保険料率が変わる場合有り
→この場合、変更の届出が必要
労働保険料該当者の申告モレ □例えば、営業所採用者の労働保険料の申告がモレやすい
□例えば、パート採用者の雇用保険分の申告がモレやすい
賃金へのカウントモレ 通勤手当や通勤補助手当の賃金へのカウントがモレやすい(例えば、60歳以上の高齢者に限り通勤費用を補助する等)
労働保険の対象外 社長、役員は労働保険の対象外。但し、役員の方で、実態において労働者の部分があれば、その部分は対象となる場合があるので手続が必要(役員の方が、業務中に事故を起こされたりすると厄介)
常時使用労働者数 □労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)の常時使用労働者数の記入欄が記入モレやすい
□常時使用労働者数は、メリット制対象かどうかを見ている所(事務労災含め)なので、特にメリット制対象かどうかきわどい人数の時は、正確に計算する必要有り。一定数以上の労働者がいれば、最大40%保険料を減らせる場合有り(逆に、労災発生が多ければ、40%増えることも有りえる)
□常時使用労働者数は、平均の労働者数を記入(累計ではない。3月度だけの労働者数でもない)
数字の書き損じ 393,300円なのに339,300円と書き損じてしまうミスに注意
計算方法 労災の賃金合計と雇用の賃金合計が同額の場合は、この同額に労災+雇用の保険料率を掛ける。そうせずに、労災保険料と雇用保険料を個々に計算して、これをたすと1円足りなくなる時があるので注意
端数処理 端数は切捨て(切り上げでない。四捨五入でもない)。分納したい場合の分納計算は、切捨てた分を第1期に納付する
記入場所のミス 不足額が発生しているのに、充当額に記入するミスに注意
金額の記入ミス 申告済概算保険料の数字を領収済通知書(納付書)に書き写して金融機関に労働保険料を納めてしまった。
対処方法:確定保険料をきちんと計算し、今期納付額の所に金融機関に納めてしまった保険料額を記入し、あとは概算保険料で帳尻(チョウジリ)を合わせばOK。但し、本来の概算保険料と大幅に異なるのであれば、社内的に不都合ないか社内での確認が必要(納付後、申告書の計算が間違えていることに気づいた。→この場合も対処は同じ)
記号の記入ミス 領収済通知書(納付書)に¥(マーク)はダメ。金融機関(機械)によっては、はじいてしまうことがあるとのことなので注意。その場合は金融機関で書き直し
ミスの修正方法 領収済通知書(納付書)の納付額欄のミスに対し修正液で直すのはダメ。書き直し
代表者印モレ 社判(ゴム印)は押したが、代表者印が押してないというミスに注意
確定保険料が少ない場合の処理 □例えば、申告済概算保険料5万円に対し確定保険料0円の場合、充当額の5万は今年度の概算保険料にまわすことができる
→この時の労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)の処理は、概算保険料5万、充当額5万、今期納付額0とする
□充当額をそのまま概算保険料とする場合(=納付額を0円とする場合)に、概算保険料=保険料率×算定基礎額とビシッとならない時がある。この時は算定基礎額はブランクでいい
概算保険料の0円申告 概算保険料の0円申告は原則ダメ。廃止届を出す必要有り。
→例外として、概算保険料0円でも1年間までは廃止届は出さなくても認められる場合有り。それでも、その期間中に、人を雇った場合は増加概算保険料を申告することとなる(予算で動く公共機関などの場合、この方法を考慮)
還付額の取扱い □還付対象額の全額を概算保険料にまわすことができる。還付対象額の一部だけを概算保険料にまわすこともできる(「今期概算保険料は確定保険料と同額でなければダメ」というのは事務処理の効率化を目的としたものであり、絶対ではなく任意の額で申告してもOK。例えば、500円の還付のために還付請求書を書いていたら、書く方も大変だが、受け取る方だって大変)
□還付額を違う労働保険番号の労働保険料に充当することができる
→例えば、現場労災の確定保険料が大幅にダウンし還付対象。この額を雇用保険料の労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)にも充当できる。
→まず、現場労災の還付請求書の充当内訳に雇用保険の労働保険番号、充当額を追記。次に、雇用保険分の労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)の充当額に現場労災還付対象となる額を反映。充当額記入欄の近くに手書きで現場労災の労働保険番号、額を記入
確定保険料算定基礎賃金集計表の扱い 労働基準監督署によっては、確定保険料算定基礎賃金集計表を添付しなければ、労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)を受け付けない所が、神奈川県内で一部である模様
手形での支払い 手形での支払いは、労働局などで支払うとしても手数料は必要
手形(小切手含む)での支払いは、金額が大きいと日本郵政公社は受け付けない(平成16年5月時点)
納付書の分解 確定保険料と概算保険料で領収済通知書(納付書)を分ける対応はされていない
申告先 申告先は労働基準監督署の他に都道府県労働局でも可能
神奈川労働局は神奈川県内であれば全ての労働保険概算・確定保険料申告書(労働保険・年度更新申告書)を受付(建設業等の雇用保険分も受付)
神奈川労働局は労働基準監督署に比べ、比較的空いているとの評判

 

 建設業等の事業所に固有の内容

申告額のミス 請負額変更されているのに、変更後の額で申告していないのはダメ
申告時期のミス 工期延長されているのに、延長前の年度で申告してしまうのはダメ
率の算出ミス 工事開始時期で労務比率、労災保険率は異なる。全部の工事を同じ率で計算してしまうのはダメ。
申告工事のミス 下請工事なのに申告してしまった
→一括開始届をきちんと毎月提出していればミスは減らせる。元請工事なければ、「今月は元請工事なし」ということで届出を行う
事務労災の還付請求 事務労災は、現場でなく事務所で労働する人に対する労災保険。対象者を労働者全員で申告してしまった場合、過去2年分までは還付対象となる。
→還付してもらうためには、理由書、再申告書(申告書の上部に○○年度再申告書と書く)、還付請求書を提出する。添付資料として、ミスした申告書控と正しい確定保険料算定基礎賃金集計表をつける
現場と事務所の両方で仕事している場合 現場と会社の両方で仕事をする人がいる場合は、事務労災にも賃金の一部を計上し、申告する
→仕事量をきちんと按分しておくのがあるべき姿。(例えば、1日では6:4、1ヶ月では7:3)
雇用保険料率 建設業だからといって、雇用保険料率は20.5とは限らない。17.5もありえる。
→例えば大手ゼネコンの場合、17.5が多い。理由は大手ゼネコンの社員は、現場で働いている人はほとんどいないため。もし、20.5で登録されていたら料率変更の申請をして、調査の結果、OKであれば17.5になる
労働保険・保険関係成立届 労働保険・保険関係成立届は、現場労災と事務労災の最低2枚提出。ほとんど同じ内容となるが、事業の概要といった所が変わる
一括有期の報告書、総括表の枚数 3枚1セット。3枚目がついていなかったり、1枚目がついていないことに注意